ニュースの概要
国際旅行向け通信を手がけるKnowRoamingが、複数回の海外旅行で使い続けられる汎用eSIM「KR.One」の提供を始めた。利用者は端末にプロファイル(=通信契約の情報)を一度登録すれば、次の旅行で新しいeSIMを入れ直す必要がない。渡航先が決まったら、同社のアプリから現地向けのデータプランを追加するだけで通信を始められる。従来の旅行eSIMは、国や地域ごとにプロファイルを取得する形が多く、設定の手間や入れ忘れが悩みの種だった。KR.Oneはその手順を一本化し、旅行のたびの再設定を減らそうとする取り組みである。
引用元: KnowRoaming、旅行ごとの再インストールを不要にする「KR.One」eSIMを開始(TechFinancials)
分析・見解
買うのは「プロファイル」から「データ量」に変わる
従来の旅行eSIMは、渡航のたびにQRコードを読み込み、新しいプロファイルを端末に入れる流れが主流だった。KR.Oneは、この入れ物を最初に一度だけ作る。その後は、中身となるデータプランを足していく形になる。
これは、プリペイド交通カードを一枚持ち続け、必要なときにチャージするのに近い。毎回カードを買い直す手間がなくなる。購入の単位が「SIMそのもの」から「通信量や日数」へ移る点が、この製品の本質だと考える。
手間の削減が、実は離脱を減らす
旅行eSIMで意外に多いつまずきは、出発前に設定を終えられず、空港で慌てる場面である。Wi-Fiがない状態でQRコードを読み込めない、という失敗も起きる。
一度登録した枠があれば、次回以降の購入と有効化はアプリ内で完結しやすい。設定の失敗が減れば、利用者の満足度は上がり、リピート購入にもつながる。事業者にとっては、毎回ゼロから顧客を獲得するコストを下げる効果が大きい。
同じ発想は他社にもあるが、旅行特化が差になる
複数地域に対応する周遊型プランや、アプリ上でプランを切り替える仕組みは、すでに他社にも存在する。ただし多くは、プラン単位でプロファイルが分かれていたり、地域が限られていたりする。
KnowRoamingは、もともと旅行者向け通信に特化してきた会社である。旅行の頻度が高い層に絞り、再利用できる体験を前面に出した点が差別化になる。一方で、端末側のeSIM保存枠には限りがあるため、常駐する枠を一つ使い続けることの負担は残る。
日本の利用者が気にすべき点
日本では、端末のSIMロック解除や、eSIM対応機種かどうかが前提になる。また、メイン回線をeSIMで持っている人は、保存枠の空きを確認する必要がある。
今後は、端末の標準機能で複数のプロファイルを切り替える流れが強まるだろう。その中で、旅行者の使い方に合わせて「入れ直さない」体験を作れるかが、各社の競争点になると見ている。
ビジネスへの影響
出張管理の手間を減らせる可能性
海外出張が多い企業では、渡航のたびに通信手段を手配する作業が、総務や本人の負担になりがちである。再利用できるeSIMを社員に一度配っておけば、次回以降は渡航先のプランを追加するだけで済む。
手配の窓口をアプリに寄せられれば、精算も利用履歴で追いやすくなる。出張回数が多い部署ほど、効果は出やすい。
導入前に確かめたい三つの点
第一に、社員の端末がeSIMに対応し、ロックが解除されているかを確認する。第二に、会社支給端末の管理ツールで、外部のプロファイル追加が許されているかを見る。第三に、料金が一回ごとの購入と比べて本当に安いかを、年間の出張回数で試算する。
月に数回しか使わない社員と、頻繁に渡航する社員では、向く契約が異なる。
旅行関連事業者にとっての示唆
旅行会社や宿泊事業者は、通信を単発の物販ではなく、顧客との継続的な接点として捉え直せる。アプリ経由でプランを追加する流れは、渡航先の情報や特典を案内する場にもなる。
まずは小規模に提携や試験販売を行い、リピート率と問い合わせ件数の変化を見ることを勧める。