ニュースの概要
ジャグプロジェクト合同会社は10月19日、海外出張が多い企業や団体に向けたeSIMサービス「トラベルSIM法人版」の提供を始めた。対応は153カ国である。管理者が専用の画面から回線を発行すると、出張者にQRコードが届き、それを読み取るだけで通信を始められる。データは月10GBのパック制で、上限に達すると通信は自動で止まる。続けて使う場合は会社の承認が必要になる仕組みだ。さらに、緊急時の支援も組み合わせている。データを使わなかった月は料金がかからないため、出張が不定期な部署でも無駄が出にくい。通信費を抑えつつ、出張者の安全にも目を配りたい企業を想定した内容といえる。
引用元: ジャグプロジェクト、法人・団体向けeSIM「トラベルSIM法人版」を提供開始(RBB TODAY)
分析・見解
請求書の驚きを防ぐ「止める仕組み」が最大の特徴
従来、海外出張の通信手段は大きく三つに分かれていた。キャリアの海外ローミング、空港などで借りるポケット型Wi-Fi、現地で買うSIMである。どれも一長一短だが、会社から見ると共通の弱点があった。使った量が後からしか分からない点だ。ローミングで動画を見たり、大きなファイルを同期したりして、翌月に高額な請求が届く例は珍しくない。
今回のサービスは、月10GBで通信を自動的に止め、追加利用を会社の承認制にした。つまり「使いすぎたあとに注意する」のではなく、「使いすぎる前に止める」設計である。通信費の管理を事後から事前へ移した点が、機能の数よりも大きな違いだと考える。
10GBという量は出張者に足りるのか
10GBは、メールやチャット、地図アプリが中心なら、一週間ほどの出張で十分に収まる量だ。一方、ビデオ会議は画質によって差があるものの、1時間でおよそ0.5〜1.5GB前後を使うといわれる。毎日数時間の会議に出る人や、テザリング(=スマートフォンを通信機器代わりにしてパソコンをつなぐこと)で資料を扱う人は、数日で上限に届くかもしれない。
ただ、この上限は欠点だけではない。止まる設計は、通信の使い方を見直す合図にもなる。問題になるのは承認の速さだ。深夜や休日の海外で通信が止まり、日本側の担当者が翌営業日まで気づかなければ、出張者の仕事は止まってしまう。承認の手間を軽くできるかどうかが、使い勝手を左右する。
QRコード配布と月ごとの課金が手配を軽くする
管理画面から回線を発行し、QRコードを出張者へ送る流れは、物理SIMやレンタル機器の手配と比べて手間が少ない。郵送も受け取りも返却も要らない。出発前日に出張が決まっても間に合う。また、使わない月にデータ料金がかからないことは、年に数回しか海外へ行かない部署にとって大きい。回線を持ち続ける固定費から、必要なときだけ払う変動費へ変わるからだ。
一方で注意点もある。QRコードはメールやチャットで送られるため、転送や誤送信によって他人に使われるおそれがある。eSIMに対応していない端末では使えず、古い機種や一部の貸与端末は対象外になる可能性もある。端末の確認が、出発前の新しい作業として加わる。
通信と緊急時の支援を一つにまとめる狙い
このサービスは緊急時の支援も組み合わせている。企業には、従業員の安全に配慮する義務がある。災害や政情不安、感染症、事故が起きたとき、まず必要なのは連絡手段と所在の把握だ。通信回線の管理と緊急時の窓口が同じ契約にまとまれば、平時の費用管理と有事の安否確認が同じ名簿でつながる。
これまでの法人向け通信サービスは、費用の節約か安全対策のどちらかに偏りがちだった。両方を一つにする流れは、今後ほかの事業者にも広がるだろう。ただし、緊急時支援の中身は、二十四時間対応か、日本語で話せるか、費用は別かなど、サービスごとに差が出る。名前が似ていても、中身は一つずつ確認したい。
ビジネスへの影響
導入前に洗い出したい、自社の出張パターン
まず、過去一年の出張を振り返りたい。行き先、日数、一人あたりの通信量、そして通信費の精算方法である。個人のスマートフォンで済ませて立替精算している会社は、実態が見えていない場合が多い。出張先が153カ国の対象に入るか、eSIM対応の端末を何割の社員が持っているかも、この段階で確認しておく。
承認ルールと費用負担を先に決めておく
自動停止の仕組みは、承認ルールが曖昧だと逆効果になる。誰が承認するのか、何時間以内に返事をするのか、不在時は誰が代わるのかを、あらかじめ決めておきたい。商談中に通信が止まる事態は、通信費の節約額を超える損失になりうる。
あわせて、上限を超えた分の費用をどの部署が持つかも決める。出張者の個人負担にするのか、出張を命じた部署に付けるのか。ここを決めないと、承認が遅れる原因になる。
試験導入で確かめたい三つの点
全社展開の前に、出張の多い一部署で数カ月試すのがよい。確かめるのは三点である。第一に、10GBで実際に足りたか。第二に、承認の手間が現場の負担になっていないか。第三に、QRコードの送付で情報の取り扱いに問題が出なかったか。
結果が良ければ、緊急時支援の窓口を、既存の海外安全対策や保険の連絡先と並べて整理するとよい。通信、安全確認、保険がばらばらだと、いざというときに迷う。担当者が一枚の連絡表で動ける状態を目指したい。